『クルマは最高のトモダチ』クルマ好きなら一度はおいでッ! スーパー耐久富士24時間…山田弘樹連載コラム
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左から筆者、大井貴之師匠、鈴木“BOB”康昭監督、木下隆之選手、砂子塾長、東風谷高史選手。木下アニキと塾長は、GTワールドチャレンジアジア鈴鹿ラウンドにも参戦が決定。'19年のチャンピオンコンビが再びM2CS Racingで走ります!
みなさん、ごきげんよう!
走っていたときはもちろんですが、レースが終わったあともしばらくずーっと、アドレナリンが出続けていた「富士24h」。
今回はその、サイドストーリーを幾つかお話します。
実はワタクシ、幸運にも富士24hは今回で3度目の出場だったのですが、このレースに来る度に思うのは、その様子が段々と進化して来ているということ。
ただそれは、競技としての先鋭化ではありません。レース・カルチャーとしての洗練をひしひしと感じています。
富士24hは予選がある金曜日から観戦できるので、見る側も長丁場を、のんびり楽しもうとする人たちがかなり増えてきました。
木曜日の公式練習走行を終えてホテルに帰ろうとすると、ゲート前にはすでにクルマの列が。中には既に、前夜祭をしている人たちも結構いました(笑)。
「これってスーパー耐久でしょ!?」なんて驚きつつ、これには私もワクワクしましたね。
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コースサイドの各エリアには、キャンプを楽しむ人たちがかなり増えました。のんびりマイペースに、24時間レースを楽しむ。これって、とっても贅沢な趣味だと思います。日本のレースカルチャーが、少しずつ変わってきているのを現場で実感しました。
沢山のクルマ好きが集まって、キャンプしながらレース観戦。夜にはエキゾーストサウンドだけでクルマを聞き分けてみたり、ローターが真っ赤に焼ける様子を見ながらBBQするの、とっても贅沢です。
あとはもう少しだけ入場料が、安くなったらいいのにな。ピットウォーク、フリーパスじゃだめ? 富士24hが安価に楽しめる娯楽のひとつになったら、クルマの魅力がもっと伝わるんじゃないかしら?
来年は、自分でキャンプしてみようかな!
ちなみにニュルブルクリンク24hだと、1週間くらい前からコース沿いの道にテントを張って、ずーっとキャンプしています。ボクが行ったときはなんと屋倉を立てて、テレメトリーまで装備してレース観戦する強者もいました。
日本もそこに、少しずつ近づいている気がしましたね。
走る側にとってはスピードが命ですが、見る側にとってレースは、スローライフを満喫できる最高のイベントなのです。
まだ市販されていない新型Zにコース上で遭遇したときは、最高にエキサイティングでした。コーナーも速いし、加速もいい。早くスープラみたいにGT4車両として発売されて、世界のレースで活躍して欲しいな!
いっぽうコースで楽しかったのは、沢山のレーシングカーに遭遇できることでした。なかでも2台の新型フェアレディZ(正式名称は日産Zレーシング・コンセプト)との遭遇は、最高にエキサイティングでしたよ!
バックミラーに映るその姿はS30を彷彿とさせ、ひと目で「Zが来たッ!」とわかります。すかさずウインカーで自分のラインを示すと、逆側からスパーッ! と鮮やかに抜いて行く。
Zは今年、「ST-Q」というメーカー開発車両クラスで走っていました。だからドライバーも一流揃いだったわけですが、その走りは本当に無駄がなくて、芸術的でした。
コーナリングスピードはとても速くて、立ち上がり加速もパワフル。
抜かれたあとは毎回ブレーキングや、ターンインの姿勢、アクセルワークを勉強させてもらいながら、最後は手を振って見送りました(笑)。
決勝でのコンスタントラップはまだST-Zクラス勢より若干遅いみたいですが、予選ではカーボンニュートラル燃料で走った230号車の松田次生選手が1分49秒159をマーク。
ST-Zクラスポールの5ZIGEN AMGに対しコンマ5秒以内に迫っていましたから、そのポテンシャルはなかなかに高そう。
こうなると、市販車も楽しみ。元Z33 Ver.NISMOオーナーとしては、早く乗ってみたいなぁ!
決勝前に行われた撮影会では、全てのマシンがメインストレート上に並びました。ST1クラス ウイナーのKTMクロスボウGTXはもちろん、スープラと比べてもとM2CS Racingはずんぐり系。よくがんばった!
明け方の出走では、初めて「Wスティント」も経験しました。給油をしながら2スティント目も連続走行するわけですが、これが恐ろしくタフで、シビれました!
M2 CS Racingはフルタンクで32~33LAP、時間にして1時間10分くらい走ります。だから単純計算で、2スティントだと2時間20分。
なんとワタクシこれを、タイヤ無交換で走ったのです!
最初のスティントが終わる頃、高根チーフエンジニアが無線で「タイヤどうしますか~?」と尋ねてきました。
そこには、右側2輪だけフレッシュタイヤに換えるプランもあったからです。
しかしここで高根さんは「終盤でも53秒台が出せているし、そのまま行ってもいいと思うけど」と囁いた。
最終的には「どちらでもいいですよ」と言ってくれたのですが、思わず自分、「がんばります!」って答えてちゃったんですよね!
ちなみに無交換だと、ピット作業時間を30秒くらい稼げます。
しかしこれが、想像を絶する苦しさだったんです。
1スティントを走らせたタイヤは、2スティントになると途端にズルズルに。明け方の涼しい時間帯なのに、スリックタイヤってこんなになっちゃうの!?
M2CS Racingにはクーラーが付いているのですが、思わず汗がどっと噴き出しました。タイムはどうがんばっても、54秒台がやっと。
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グリップダウンしたスリックタイヤで走り続けることが、こんなに難しいとは知りませんでした。不幸中の幸いは、決勝で雨が降らなかったこと! 予選でゲリラ豪雨になったときは、生きた心地がしませんでした(汗。
ただいっぽうで、学ぶことも多かったです。
この状態で頑張るとABSが介入してタイムがガクン! と落ちる。
そしてブレーキも、酷使してしまう。
だから高い負荷をかけないようにブレーキングするんだけど、タイムも落とさないように頑張る。
もうね、“頑張る!”って言葉が、一番相応しかったです。よくスーパーGTのオンボード映像でドライバーが、「タイヤがない!」と叫んでますけど、あれ本当でした。
ちなみに走行後、大井師匠から「そういうときは遠慮しないでタイヤ換えてくださいって言うんだよ」と言われてズッコケそうになりました。タイヤ換えて、良かったの!?
「ダメだったら、どうせ換えてくれないんだから」
……こういうところが、経験の無さですよね。
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タイヤと同じくらい重要だったのがブレーキ。24時間用のパッドは通常の倍の厚みなのですが、それでも1回交換で走り切るのはギリギリでした。写真はメカニックさんが、アッツアツのローターを運んでいるところ。
そんなこんなで木曜日の午後から日曜日の15時まで続いた、長い長いレースウィークは無事に終了。今年もチーム・スタディは3位表彰台に上がることができました。
スーパー耐久のよいところは、勝つためだけのレースじゃないところ。各チームが自分たちが設定したゴールに向かって、懸命に走っていることだと感じました。
そして、やっぱりその根本にあるのは、「クルマを思い切り走らせるのって、楽しい!」というシンプルな気持ちだと思います。
24時間を走り終えたM2CS Racingの勇姿です。タイヤかすがこんなに付くの、ビックリですよね。ハブ周りにダメージを抱えながらも、最後まで走り切ってくれてありがとう!
この楽しさをなくさないために、ST-Qクラスのマシンをはじめとして、沢山のクルマ好きたちが地道に活動しています。
そんなスーパー耐久 富士24hを、みなさんも一度は見に来てくれると嬉しいな。
今年もありがとう、BMWチーム・スタディ。
ありがとう、スーパー耐久!
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個人的に感激したのは、それぞれのドライバー用にヘルメットスタンドが用意されていたこと! ちなみにボックスの床面にはファンが入っていて、インナーを乾かしてくれるんですよ。
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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