『クルマは最高のトモダチ』ローブでカッ飛べ!オススメは「フレンチ・ロケット」…山田弘樹連載コラム
ボンジュー!
突然ですがみなさん、「フランス車」には乗ったことがありますか?
私は仕事がらよく乗るのですが、今年は固め打ちのごとく“おフランス”な日々が続きました。
そこでふと、思ったんですよね。
「フランス車、いーじゃん」
そりゃあフランス車、いいよ。小粋でお洒落だし。
そうじゃなくて、私は言ってるのは「走りのクルマだぜ!」ってお話。
ここのところGR86やらロードスター990Sやら、フェアレディZやらシビック タイプRやらと沢山のスポーツカーが出たけれど、
「正直どれも、安くはないよね」
「走りが楽しくて手頃なクルマ、めっきり少なくなったよね」
そんな話を周りからもよく聞くのですが、それなら
「フランス車に乗ればいいじゃない!」
と思ったわけです。
パンが無ければケーキを食べればいいじゃない! ってワケではないんですけどね。
ところでみなさん、フランス車にはどんなイメージを持ってますか? やっぱりお洒落? デザインが前衛的? 壊れそう?(笑)
走りと言うよりは、見た目のことが、パッと思いつくんじゃないかな。
そして「実はよくわからない」んじゃないかしら。
でもね、フランス車って、走りが楽しいんですよ。
さらに言うと、意外とコスパに優れてるんです。
その理由は、フランス車のほとんどが大衆車だから。
「輸入車=高級車」と思われがちですが、プジョー、シトロエン、ルノーは昔っから“フツーのクルマ”です。
今でこそDS(ディー・エス)がシトロエンから独立して高級ブランドを目指していますが、近代フランス車の歴史は大衆車の歴史。スポーツカーだって、アルピーヌが復活するまでしばらくなかった。
ただ同じ大衆車でも、フランス人が造ると国産車とは、かな~り違う乗り物になります。
ヨーロッパはクルマ文化なので、小型大衆車でも作りがしっかりしてる。彼らはバカンス時期になると人と荷物をギューギュー詰めにして、長距離移動をこなしますからね。
フロント・マクファーソンストラット、リア・トーションビームなんていうシンプルな作りのBセグコンパクトでも、ボディは要所で剛性を高めていて、サスペンションもストローク量がある。
だからクルマが少し重たくて燃費も国産車のようには良くならないんですけど、代わりに長距離移動が快適で、走らせた質感も高いんです。
ヤリスやスイフトがヨーロッパでクルマを作り込むのも、ヨーロッパのニーズは、レベルが高いからだと思います。
ワイパーが盛大に“ビビる”とか、小物入れが少ないとか、細かい所には、配慮が足らないことが多いんですけどね(笑)。
我が家のシトロエン DS3 スポーツシックは'11年式の初代・前期モデル。パステルカラーがオッサンにはちょっと可愛すぎますが、走りはビュンビュン系。そして数が少ないからでしょう、DS3に出会うと必ず挨拶されます。1回は美人な女性が手を振ってくれて、もう1回は大門サングラスかけたオジサンがサムアップしてくれました!
そしてポイントふたつ目は、チューコ車なら未だにMTが結構ある! ということ。
現行の輸入モデルはほぼAT仕様になってきていますが、ちょっと前のモデルなら、日本でもMT車が手に入ります。さらにラテン系チューコ車は、恐ろしく安い(笑)。
故障が心配? 確かにそれは、あります。あまりに年式が古いと水回りや電装系の樹脂部品が劣化することはあるけれど、それは消耗品であり国産車も同じです。
フランス車はハイブリッドなんかもやっと最近出たくらいだし、シトロエンのハイドロとかじゃなければその作りは根本的にはシンプルだから、直せます。純正パーツが割高で、ハマるときはハマりますけどね。
そんなフランス車のなかで今回私がお勧めするのは、「シトロエン DS3 スポーツシック」というクルマです。
そう、モータースポーツ好きの方ならおわかりでしょう。WRCの絶対王者、セバスチャン・ローブが8度目のタイトルを決めたマシンでありますッ!
もちろんローブが乗ったのはWRカーですが、市販車のDS3だって、そのイメージに負けないくらい結構な“ビュンビュン系”なんです。
実はこれ、私の奥さんのクルマだったりします。
2011年式で走行距離は8万km! 1万1000kmのときに中古で購入してから10年乗り続けて、トラブルはほとんどなし。エンジンのセンサー不良には何度か泣かされたようですが、少なくともボクも乗るようになってからは、至って快調です。
そしてその走りが、じつにオモシロイ。
エンジンはガソリン仕様の1.6L直列4気筒ターボで、6MTを介して前輪を駆動。Bセグのコンパクトハッチなのに車重が1190kgもあるのは、前述の通り車体をシッカリさせるためでしょうね。
その分パワーは156PS/6000rpm、トルクは24.5kg-m/1400-3500rpmもあります。
このクルマがデビューしたときのことは、覚えています。
昔の「DS」をオマージュしたというフローティングルーフ(ピラーをブラックアウトして、ルーフが浮いているような視覚効果を与えています)や、Bピラーのシャークフィンが独特。
インテリアはシルバートリムとカラーパネルの使い方が絶妙、というか独特。日本だとこのセンス、ないですよね~。でもウチの奥さんは、この内装も決め手だったようです。6速MTはノブの重さを利用してシフトするタイプで、ストロークも短かすぎず長すぎず、ちょうどよい感じ。クラッチは女性だと「重たくはないけど反力がある感じ」とのこと。男性目線だと適度なシッカリ感ですよ。
インテリアのパネルまでカラーリングしたポップな色使いも、お洒落な人たちからはかなり高い評価を得ていたようですが、自分はそのドキンちゃんみたいな顔が正直ヘンテコだなぁ…と思ってました。
これ言うと、必ずケンカになります(笑)。
でもね、走りはいいんですよ。
スポーツモデルなのですが、サスペンションはしなやか系。最初はダンパー抜けてるのかッ!? と思ったんですが、どうやらそうじゃないっぽい。
なおかつC3のボディはコンパクトSUVが台頭する前のハッチバックなので、室内空間を広く取るためにかなり全高が高め。
だからカーブでは重心の移動を予測しながらハンドルを切って行かないと、グラッ! とロールします。ただこのロールをうまく使いながら荷重移動させて曲げて行くと、びっくりするくらい気持ちよい走りができちゃうんですよ。
これこそが、シトロエンがラリーから得たノウハウだと思います。もっといえば石畳や荒れた国道をカッ飛ぶ、フランス車の足そのものなんです。
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エンジンはなんと1.6リッターターボ! 156PSのピークパワーはレブリミット寸前の6000rpmで発生しますが、高回転まで一気呵成に回るというよりは、トルクを生かした走りが得意。低回転からトルクが出るので立ち上がり加速が良く、リアルワールドで速いタイプです。
エンジンはトルク重視型のターボなので、コーナー出口からトラクションがきちんと掛かります。MTだから6500rpmのレブリミットまで引っ張ることもできるし、ショートシフトしてもトルクバンドが外れない。
クルマの運転って、じつはスタビリティの高いスポーツカーよりも、こういうロール量が多いクルマで走り込む方が、うまくなれるんですよね。
その走りがあまりにも楽しいので、私も自然とDS3に乗る機会が増えて行き、しまいにはセバスチャン・ローブから名前を頂いて、ウチでは“セブ”って呼ぶようになりました(笑)。
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ちょっと自慢なのは、純正の17インチからOZ Racingの16インチへサイズダウンしていること。これでバネ下のバタつきが、かなり解消されます。タイヤも、無理にハイグリップを履く必要なし。ミシュランのエナジー・セイバー+で、十分楽しく走れますよ。
そんなDS3を某中古車販売サイトで調べると、MTモデルは40台(9月調べ)。
しかも最安値は我が家のセブと同じ2012年モデルの無事故車が、総支払額35万円!? 走行距離は16.9万kmと2倍も走ってますが、それだけ乗り続けられるクルマなんですよ。さらに6.9万kmの個体でも、総額56万円でした。
世界で1000台、国内35台の限定車であるDS3レーシング(207PS)だと価格も高くなってしまいますが、それはマニア向け。4万km以下の低走行車だって、120万円くらいで狙えちゃいます。4万kmで低走行? はい、何度も言いますがDS3なら、そのくらい平気で走ってくれます。
これが安いかといえば、10年前のクルマですからビミョーなところですが(笑)、サーキットやワインディングをゴリゴリ走るのではなくて(それもチューニングすれば十分できるけどね)、普段の生活を気持ち良く走りたいなら意外やDS3はお勧めです。
そのひとクセもふたクセもあるフランス車、そしてシトロエンの乗り味に最初は「なんじゃこりゃあ!」ってなるとは思いますが、クルマ好きなら走り込むほどに、好きになると思いますよ。
今年は新型車が沢山登場しているフランス勢。プジョー308は、かなりイケメンなCセグハッチ。新型はちょっと足が固くなったけど、走らせるほどにしなやかさを増す感じは、やっぱりプジョー。シトロエンC5 Xは、その伸びやかなスタイリングと、「魔法の絨毯」と呼ばれるダンパーの制御が最高に心地良いフラグシップモデル。
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ルノーは遂にハイブリッド世代へと突入。エンジンに4段、モーターに2段のギアを組み合わせた「E-TECH ハイブリッド」と、プジョーよりもさらにハッキリ硬めな足周りを組み合わせた走りは爽快感たっぷり。Bセグコンパクトらしからぬボディの質感も、国産車とはちょっと違うポイント。
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フランス車は大衆車が基本。スポーツカーもハッチバックをベースにしたラリーの派生モデルや、これにFFコンポーネンツを逆転搭載した異端ミドシップをたまに出すくらいでした。だからアルピーヌでスポーツカーシャシーのA110が復活して、フランスのスポーツカー好きたちは嬉しかったでしょうね!
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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