『クルマは最高のトモダチ』スポーツカーバブルなんて、弾けちゃえ!…山田弘樹連載コラム
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現行モデルはホンダいわく、「日常の使いやすさ」と「走り」を、高い次元で両立する「アルティメイトスポーツ」。5ドアハッチをベースにする以上こうしたキャラクターになるのは当然だし、自分もその実用性に惹かれてディーラーに赴きました。
みなさんゴキゲンよう!
前回は「タイプRを、もっと身近に!」というお話をして、最後に「でもこれが、実は売れているんです」と締め括りました。
というのもワタクシ、夏に近所のホンダ ディーラーまで行ったんです。
ちなみに我が家には、「4ドア車」が一台もありません。
奥さんのクルマは'11年式のシトロエンDS3(3ドアハッチ)ですし、私のクルマは'95年式のポルシェ911 カレラ(2ドアでリアシートは荷物置き場)と、'86年式(たぶん)のトヨタ スプリンター トレノ(こちらも3ドアハッチ)。
だからシビックは5ドアハッチですが、リアにドアがあるクルマに憧れていた。奥さんとも「人を乗せたり荷物を積むときに、もう少し楽なクルマが欲しいよね」と、よく話していたのです。
都合がよいことにふたりともMT車はOKですし(というかウチのクルマは全てMT車です汗)、走らせて楽しいクルマが好きなので、シビック タイプRは狙い目だったわけです。
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7月の発表から1ヶ月くらいしてディーラーに行くと、すでに順番待ちの状態。でも最大で3年待ちだと、その間にマイナーチェンジモデル出ちゃうんじゃないかしら? なんて心配になりますよね。
というわけでディーラーへ赴くと、まだ実車はなかったのですが、タイプR担当のセールスマン氏が色々教えてくれました。
まずは一番気になる、納車時期。彼曰く、7月の発表時にいちはやく申し込んだ人たちは12月ごろの納車が濃厚だけど、今(8月初旬)からだと長い場合で、2年待ちッ!
そのディーラーは横浜市でもかなり実績のあるお店だそうで、「実際は、もっと早くなると思いますが…」とのことでした。
うーん、すごい待つなぁ……。
私はクルマとの出会いって縁だと思っているので、残念だけど今回は諦めました。本当に欲しいなら、もう発売前から駆け込むくらいの勢いが必要だったわけですね。
実際私の知り合いも、そうやっていち早くゲットしていました。
でも、久しぶりのディーラーはとても楽しかった。新車購入を検討するのって、やっぱりワクワクしますよね!
そして同時に、ドキドキも味わいました。もしシビック タイプRを購入したら「いったいどのクルマを処分するの?」という家族会議は必至だったからです。正直、どれも手放したくない(笑)。
当分は、不便なクルマたちを楽しもうと思います。
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でも初代NSX TypeーRやDC2インテRのハンドリングを知る自分としては、ちょっと心中複雑。なぜならこうした実用性を無視してボディを軽く、小さく作れば、運動性能はもっと上がるから。でもそれでは、販売が期待できないわけですよね。スポーツカーって難しい。
あとひとつ、考えさせられる話もありました。
仮にタイプRを購入しても、セールス氏は「きっと損はしないですよ」と言うのです。なんでもこのディーラーで先代FK8型を購入したお客さんが、4年間普通に乗ってこれを売却したとき、購入時とほぼ変わらない額で売れたとか。
となれば現行FL5型も、大きくは値下がりしないでしょう。それどころか純粋なガソリンエンジンとしては最後のモデルとして、プレミアム価格になる可能性がある。
そもそもこうした逆転現象は、高性能スポーツカー市場で既に起こっています。私が持っている空冷のポルシェ911やAE86も、そのなかの1台です。シトロエンDS3は、そんなことない(笑)。
そしてシビックよ、オマエもか……。
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最近試乗したなかで、シビック タイプRのライバルになると感じたのは「ゴルフR」(320PS)。4WDだから純粋比較はできないけれど、サスペンションがずっとまろやかで普段乗りも快適。ただしその価格は639万8000円! くーッ。こちらも近いうちに紹介しますね。
でも私は、こうした市場をあまり良く思っていません。
確かに自分のクルマの価値が上がるのは、ちょっと嬉しい。けれどあまり度が過ぎると結果的には、愛車のことが嫌いになりかねないからです。
なぜかって? だってクルマの価値ばかりが気になると、思いっきり走れなくなるじゃないですか。度を超すと普段乗りして距離が増えることにさえ、神経質になる。ちょっと傷付いたら、そりゃもう大騒ぎです。
もちろん私だって、自分のクルマは大事です。
赤パンはもはや空気のような存在ですが、911カレラなんて4年経った今でも溺愛中です。
でもね、サーキットだって走ります。というか走りたい!
私はずっと、憧れのクルマで思い切り走ることが夢だったんです。
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かくいうポルシェ911も、ミドシップマシンと比べたら純粋なスポーツカーではないんです。でもミニマルなリアシートがあったから、生き残ることができた。リアエンジンの挙動を抑え込みながら己を鍛え上げたから、みごとなスポーツカーになったわけです。
そして、改めて思うわけです。
そもそも“チューコ車”って、夢のある選択肢だったはずだと。それは新車で買えなかった憧れのクルマを手に入れるための、一番身近な方法だったはずです。
確かに4年間、ほぼ維持費だけで普通に乗れてしまうことってミラクルだけど、やっぱり不自然ですよ。
だから私は早くこうしたバブルが弾けて、本当に欲しい人がクルマを買える状態になって欲しい。
そのためには、どうしたらよいのでしょう?
残念ながら、明確な答えはまだありません。
EVでガソリン車よりも楽しいスポーツカーを作るのは、ひとつの大きな解決策でしょう。
中古車で言えばみんなの目が肥えて、きちんと走れるスポーツカーじゃなきゃ価値が出ないとかね。そしたら好きな人は、安いクルマを買ってコツコツ直せばいい。そうすればショップも、仕事になる。
昔はみんな、そうでしたけどね。
うーん、どれも決定打にはなりませんね。
まずは半導体やサプライチェーンの供給状況が改善されて、シビック タイプRの供給が増えるのが、市場価格を下げる一番健全な方法でしょうか。
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シビックのコンポーネンツを使いながら作り上げた走りのSUV「Z-RV」も、セールスマン氏いわく既に人気で、価格が下がりにくい状況になっているとのことでした。
参考までに先代FK8の世界での販売台数は、5年間で4万7200台。そのうち日本は8100台だと言います。現行モデルは月産400台ですから、5年作り続けても2万4000台。うーん、こりゃ倍作らなきゃだめか?
でもR32 スカイラインGT-Rは、4万4000台作っても、いまとんでもないことになってるんだよな……。
一体どうやったら、中古車市場は適正化されるんでしょう?
(テキスト:山田弘樹)
![](/pages/contents/article/column_yamada/kouki_profile2.jpg)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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