『クルマはトモダチ』アバルト595コンペティツィオーネに首ったけ!…山田弘樹連載コラム
みなさんゴキゲンよう!
GWも、アッという間に終わってしまいましたね。
みなさん、楽しく過ごされましたか?
かくいうワタクシは、まったく休めませんでした(泣。
それでもお仕事中は「小さくて元気なクルマたち」に沢山乗ることができたので、今回はそのなかの一台をご紹介しようと思います。
というわけで今回の主役は、アドレナリングリーンの限定色が鮮やかな「ラヴォーノ」(http://la-buono.jp)のアバルト595コンペティツィオーネです。
しかしアバルト人気、相変わらずすごいですね。昨年の日本累計販売台数は、日本自動車輸入組合(JAIA)によると1020台。
これってイタリア本国をも抜いた、世界一の販売台数なんだそうです。アバルト500のデビューは2009年ですから、もう14年も経っているんですけどね。
ちなみに今回紹介するラヴォーノは、新進気鋭のアバルト専門メーカー。面白いのはその代表である星名功一さんが、実はアウディのプロフェッショナルなことなんです。
星名さんは10年来アウディカスタマーレーシングのサポートをしていて、私もレースや試乗会の現場では、よく合う間柄。そしてご自身でも、「Kreis5 SHONAN」(クライス・ファイブ湘南:http://www.kreis5.jp)というアウディの専門メーカーを経営しています。
そんな星名さんが、なんでアバルト?
理由はとってもシンプルで、「通勤用に買ったら、すごく面白かった!」からなんだとか。
さらに凝り性の星名さんは、オーナー目線で気になるパーツを色々作ってみた。そしたらこれが、大人気に。
少し高めなシートの着座位置を補正してくれるローポジションシートレールなんかは、瞬く間にアバルトディーラーでも扱われるヒット商品となりました。
そんなラヴォーノのコンセプトは、普段乗りの楽しさを磨き上げること。だからその足周り製作も、まずは純正形状の「ローフォルムスプリングKIT」から始まりました。
オーナーのみなさんならご存じだと思いますが、アバルトはノッポなボディにショートホイルベースの組み合わせ。だから重心が高めで、不整地だとピッチングが出やすいんですよね。
なおかつリアサスのストロークが短くて、足周りを固めると乗り心地も悪くなりやすい。以前このコラムでも紹介したHKSなんかは、この乗り心地を車高調サスキットと特性バンプラバーで攻略していました。
対してラヴォーノは、純正形状スプリングにこだわった。
純正形状でスプリングを作るメリットは、スプリング鋼材そのものの長さを長く取れることだそうです。コイルスプリングの全長(いわゆる自由長)ではなくて、鋼材自体の長さが長く取れる。
そうすると不等ピッチ特性に対するデザインの自由度が上がって、さまざまなシチュエーションに対応させやすくなると言います。なおかつストローク量も、確保しやすくなるわけですね。
またスプリングがタイヤ側にオフセットすることで、横力に対する剛性も出しやすくなる。だからダンパーケースを強化しなくても、スムーズに伸縮できるようになります。
対してチューニングサスで直巻き車高調が多いは、まずスプリングレートの選択肢が多く、レースやタイムアタックでいち早くセッティングが導き出せるからでしょう。汎用品が使えるから、コストも抑えられます。
その分乗り心地やダンパー性能を出すには、テンダースプリングを入れてストローク量を増やしたり、ダンパーのケース剛性を上げなくてはいけません。
ちなみにこのローフォルムスプリングKIT、私も試作段階から試乗していたんですが、かなりのこだわりを持った逸品です。
なんとそのスプリングレートは純正(コンペティツィオーネ)よりも低められているのですが、バリアブルピッチの特性を綿密にチューニングすることで、スポーティなハンドリングが実現できています。
そして、当初の狙い通り乗り心地がいい。さらに言うとボディ剛性が異なるクローズドボディとオープントップ用に、それぞれリアスプリングを設定しているんです。
なおかつ「ローフォルム プラス スプリングKIT」という、少し車高の落ち幅が少ない仕様も2種類作って、合計4種類の純正形状スプリングをラインナップしているんですね。
しかし今回はそれだけでは飽き足らず、遂にこのスプリングたちに合わせた、純正形状ダンパーも作ってしまいました。
そしてこれって、なかなかにすごいことなんです。
だって純正形状のスプリングシートを持つダンパーは、汎用部品が使えない。さらに言えば他の車種にも使えないから、コストが掛かるわけです。むしろ車高調で済ませてしまう方が、安く済む場合もあるはず。
それを承知でラヴォーノはわざわざ純正形状ダンパーを作り、そこに30段の減衰力調整機能を付け加えたわけです。
というわけで、その乗り味は!?
これがスポーティなハンドリングはそのままに、コンペティツィオーネ特有の突き上げ感をうまく吸収したサスキットに仕上がっていました。
サーキットでタイムを出す! みたいなサスキットではないけれど、アバルトの楽しさは十分に引き出せていました。
個人的なことを言うと、私はいわゆるベーシックグレード(今で言うとF595ですね)の、ソフトな足周りが一番好き。極端に言えばコンペティツィオーネだって、このアシでいいんじゃない? とすら思っています。
でもメーカーの立場だったらパワーに対するスタビリティは確保したいでしょうし、オーナーの立場だったら、ダイレクト感のあるスポーティなハンドリングは捨てがたいはず。そしてなおかつ、普段は乗り心地良く走りたいわけですよね?
こうしたニーズに応えるサスキットとして、ラヴォーノの足周りはかなり高得点だと思います。
今回試乗したデモカーはECUチューンもしてない180PS仕様のノーマルだったのですが、ラヴォーノ オリジナルマフラーの抜けが良いのか、ちょっと速い気がしました。ちなみにこのマフラーの利点は、排気効率の向上を狙いながらも静かなこと。純正レコードモンツァはかっこいいんだけど、音が大きくて……というニーズに応えたんだそうです。
そしてこうした呆れるほどのこだわりも、やっぱり作り手がアバルトを好きだからできたこと。
コロナ禍だった時期を使って、自社のレースエンジニアリングを総動員して作ったその成果が、足周りにきちんと現れているわけです(笑)。
でも小さいクルマって、なんでこんなに思い入れちゃうんでしょうね? やっぱりその手の内にある感じが、なんとも言えずカワイくて、思わず手を掛けちゃうんだろうなぁ。
アバルトもEVの「500e」が発表されましたが、まだまだガソリンモデルの人気は続きそうですね。
山田弘樹
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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