『クルマはトモダチ』真夏の旧車“怪談”…山田弘樹連載コラム
みなさんゴキゲンよう!
夏休み、始まりましたね。そして古いクルマたちにとっても、恐怖の季節が本格的に始まりました。
そう、エアコンの季節です。
類は友を呼ぶと申しましょうか。私の周りでも、エアコン問題に直面したオーナーたちが、いろいろとボヤいております。
お友達のライターさんはなんとも可愛らしい「スバル R1」に乗っているのですが、エアコンが壊れその修理見積もりが、20万円ほどになったとのこと。
そもそもが45万円で購入したクルマに、20万円掛けるのは正解なのか? と真剣に悩んでました。
うーん、その気持ち、わかる! 悩ましい!!
久々に強烈だったのは、先日の取材のときのこと。モーターファン.jpの担当編集Oさんのクルマで栃木県のテストコースに向かったのですが、送風口から出てくる風が、まったく冷たくない(笑)。
初代レガシィ セダンのRS、しかもモータースポーツベース車の「Type RA」だったから私もワクワクしていたのですが、「最近ちょっとエアコンの効きが……。すみません!」と編集担当氏。
私も旧車大好きなので「大丈夫です!」と踏ん張りましたが、その日は今年で一番の猛暑と予報された日でした。
キンチョーの夏、旧車の夏。
かくいう私も、エアコン問題はこれまでに色々と直面しました。
赤パン('86年式と思われるAE86)は、壊れるたびに故障を追いかけて直していきましたが、なかなか良くならない。
意を決して2015年にフルオーバーホールをしてからは、涼しい風もでてくれるようになったし、何よりストレスが減りました。トータルで30万円くらい掛かりましたけど、本当に直してよかった。
対して'95年式の911は、今のところエアコン本体は無事。
しかし911は室内の足もと両側に「ミキシングフラップモーター」というのがありまして。これが片方壊れています。
ミキシングフラップモーターはエンジンから来る温風と、エアコンからの冷風をフラップの稼働でまぜて温度調節するモーターなのですが、壊れると当然温度調節ができなくなります。
温度を下げても、温風がガンガン出てくるわけです。
対策としては稼働する方を運転席側に付け、助手席側を季節の変わり目ごとに開け閉めしています。夏は閉めてエンジンの温風をシャットアウトし、寒くなったらまた開く。今年もその季節が、やってきたわけです。
ちなみにその価格は社外のパーツサイトでも、モーターのみで約4.6万円しますから、開け閉めで対応できているうちはこれでいいかなと思っています。
でも旧車のパーツ価格って年々上がって行きますから、いつかは手に入れないといけない。片方が壊れているということは、動いている方もとっくに交換時期なわけです。
写真はミキシングフラップとそのモーターで、マイ993では季節の変わり目ごとにフラップを閉じたり開いたりしています(笑)。モーターのみならずフラップも壊れてしまっているので、換えるときはASSYですね。でもこれは「故障」というより「劣化」。旧車に乗ると、壊れることに対する意識が変わってきます。
さらに言うとエアコンからの冷風を送り込むブロアモーターも、鈴虫のようにキュルキュル鳴っていますし(これはOEMパーツを調達済み)、エアコン本体やコントロールパネルが壊れたら、それはそれは恐ろしい金額になります。おおよそのイメージですが、国産エアコンの3倍くらい。
話を聞いているだけで、涼しくなってくるでしょ?
だから私は、旧車を手放しでは勧めません。
ひとつ理想論を述べるなら、エアコンをフルOHしたときの金額を調べて、その予算も含めて買えば完璧です。
993はR134aガスですが、旧型冷媒ガスのときには、その扱いをきちんとしてくれるお店がいい。レトロフィットさせるにも、ノウハウが必要です。となるとそのクルマに詳しいお店がよいと思います。
それでも旧車の場合は、現代のクルマのように涼しい風がビンビン吹くとは限りません。赤パンだって911だって、猛暑だとエアコンの効きは弱まります。
現代のクルマならガラスがUVカットになっていたりするし、万が一の故障でも保証が効きます。
それを受け止めた上で、旧車にチャレンジして欲しいかな。
この壁を、乗り越えてこい!
ただですね、世の中には猛者もおりまして。
直そうとするから、お金が掛かる。「じゃあ直さなければいいんだよ!」という、マリーアントワネットのような強者です。
もちろん走らせる上で安全に関わる部分は、直すべき。でもエアコンなら、暑いときは乗らなければいいじゃない。愛車を手放すくらいなら、マイペースで少しずつ直していけばいいんだよ。
ザッツ・スローライフ! というハイレベルな考え方です。
私は好きなクルマとはなるべく一緒に過ごしたい派なので、どうしても不具合部分が気になってしまうのですが、このスタンスも緩くていいですよね。趣味のクルマなら、それができる。
私の知ってる猛者シリーズその③:旧友のボンビー伊藤カメラマンが所有するCR-Xには、エアコンそのものが付いておりません(笑)。こっちも夏場は走らせないんでしょう? いえいえ、とんでもない。その走行距離はあと3000kmで、なんと80万km(!!)。月を往復してさらに、3万km近くを走破しているんです。かつて「地球に帰るまで、もう少し。」を連載していたのですが、往復できちゃったのね。
旧車に乗るコツは、ひとこと「やりくり」です。
そしてそこに一番必要なのは、お金より愛情!
というわけで暑い日が続きそうですが、みなさんくれぐれも熱中症には気をつけてください。って、私がですね!
協力:GENROQ編集部
山田弘樹
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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