『クルマはトモダチ』いつかはロードスターでパーティーレース!…山田弘樹連載コラム
みなさんゴキゲンよう!
今回は前回に引き続き、7月28日(土)/30日(日)に筑波サーキットで開催された「ロードスター・パーティレース」と、「マツダファン・エンデュランス」(通称 マツ耐)のレポートです。
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乗る度に、必ず欲しくなるNDロードスター。自分が買うなら、やっぱりクラブレーサーの「NR-A」がいい。大人になっても、真剣になれる場所があるのは最高です。仲間や奥さんと一緒に、休日を楽しんでみたいなぁ。そんなこと言ってると赤パン(ハチロク)拗ねちゃいますね。
パーティレースは、マツダ開発本部の梅津選手がNDシリーズクラスにエントリー。私はもっぱらその応援だったのですが、これが色々面白かったのでありました。
ご存じパーティレースは、ロードスターの競技用ベース車である「NR-A」を使ったワンメイク。そして自分でも、「今やるなら、これかな!」と思っているクラブマンレースです。
ローパワーだけれど、抜群に楽しいコーナリング。指定タイヤはほどほどなグリップの市販スポーツラジアルだから、コストも抑えられて、クルマへの負担も少なそう。
目をつり上げてレースをする気はないけれど、予選を集中して走ったり、決勝を闘ってチェッカーを受ける“あの感じ”は、やっぱり楽しい。
これならマイペースで、長く続けられそう! というイメージが湧くわけですね。
ということで土曜日のパーティレースは、興味津々でパドックをリサーチしました。
感心したのは、猛暑のなか多くの参加車がタイヤカバーをしていたこと。
当日の気温は午前中で既に30度を超えていて、路面温度は50度オーバー(汗。これだと確かにタイヤは、本来のピークグリップを発揮しにくくなります。
タイヤは、ブリヂストンPOTENZA「RE-004 Adrenaline」のワンメイク。猛者たちいわく、減らせば減らすほどブロック剛性が上がってタイムが出るとのことですが、レース後は公道用車検があり、きちんと残り溝がチェックされます。
パーティレースはナンバー付きのNゼロ規定。レースを終えて、家に帰るまでがワンパックなのです。
さすが常連さんたちは真夏のレースをよくわかっていて、タイヤに熱が必要以上に入らないようにカバーを掛けているマシンが沢山いました。またクーラーが効いた部屋も参加者に開放されていたりと、運営側の暑さ対策もきちんと練られていましたね。
だったらレース用タイヤと公道用タイヤを、別にすればいいんじゃない? でもロードスターだと、タイヤ4本は積めないですからね。
それでも熱心なエントラントは練習用とレース用タイヤを分けているから結局は同じなんですが、この公道用車検がコスト高騰を抑える防波堤にはなっていることは、確かだと思います。
ちなみに私が初めてレースをしたフォルクスワーゲン「GTIカップ」は、ゴルフⅢがハッチバックだったのでレース用Sタイヤやら工具やらを満載して、自走でサーキットに通っていました。懐かしいなぁ。
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新品を卸したPOTENZA「RE-004 Adrenaline」は、2時間半のレースを走り終えてもタイヤの面構えがとてもきれいで驚きました。レースにも参加していたブリヂストンの開発陣いわく「ロードスターの接地性の高さも、すごく効いています」とのこと。そして「我々もマツダさんのように、たとえばパーティレースの先行開発タイヤで参加して、みなさんとコミュニケーションを図れたら面白いですね!」と言ってました。それは楽しそう!
レースを終えて話をしてくれた24号車のオーナーさん。これまでに使ったタイヤのシールを全てトランクに貼っていて、価格の変遷がわかるんですって(笑)。これは小売り希望価格だから、実勢価格はもっと安いかな。「レースは東日本シリーズに出ていて、年間使用する本数は4セット」とのこと。1レース1セットの計算ですね。他のベテラン選手に聞いたら「年間1セットから始められる」と言ってたので、沢山練習してタイヤも作り込んでいるんでしょうね。
さて肝心なレースですが、梅津選手は予選22番手のブービーからスタートして、20位でチェッカーを受けました。
本人は久しぶりの筑波に慣熟しきれず、ほぼぶっつけ本番で臨んだことを悔やんでいましたが、彼は当然遅いドライバーではないし、ここにはノウハウも大きく関係していたと思います。
NDシリーズクラスはドライバーもさることながら、クルマを仕上げるレベルもかなり高い感じ。タイヤを作り込み、アライメントもきちんと狙いを定めています。
アームの角度やサスの伸び方にまでこだわって、ブッシュの締め込み位置を決めてるなんて話もありました。当然オイルも、こだわっているでしょう。
いっぽう00号は(レースではゼッケン30)、市販車の基準に近い状態で、オイルも純正のまま走らせていますから、正直レースだとちょっと不利ですよね。
また開発車両のため試作ユニットや計測器で重量が10kgほど重たく、燃料もほぼ満タンだったことも大きく影響したようです。
しかしながら翌日のマツ耐では、その予選タイムも1分12秒849と、前日から0.772秒もベストを更新。予選順位も、11番手となりました。
タイムアップの主な理由は梅津選手がコースに慣れたことですが、2時間半の長丁場および後車検を考慮して付け替えられた、新品タイヤと車両の相性もよかったようです。
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今回はDSC-TRACKの実戦制御確認がテーマだったので、当然レースではこれをアクティブに。私のスティントでは制御介入を感じることはなかったですが、全開走行を1スティント続けた梅津選手は「オーバーテイク時には何度か助けられました」とのことでした。タイムもドロップさせず、いざというときに助けてくれるDSC-TRACKは、アマチュアにとってはとても心強い装備になると思いますよ。
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真夏の開催は「エアコンが義務づけ」という画期的なレギュレーションを採用するマツ耐。しかし今回は、予想外のケースが起こりました。全開走行するとコンプレッサー保護のために、エアコンが効かなくなってしまうわけです。ルールでは幌と窓が締め切りですから、最終スティントを担当した梅津選手(しかも真冬のニュージーランド帰り! 笑)は相当に熱かったみたい!
タイヤはなるべくゴムが新しくて、溝が少ないと速いわけです。でもパーティレースは、スクラブ(新品タイヤを削ること)は禁止です。
要するにタイヤは自らが走って減らす必要があるわけですが、きっとその熱の入れ方なんかにも、ノウハウがあるのでしょうね。
パーティレースは実に20年以上の歴史があるわけで、こうした様々なノウハウがあるのも当たり前です。
ただ個人的にはNDシリーズクラス(上級者クラス)ならまだしも、クラブマンクラスはこうした細かすぎる裏技の必要がない、純粋に運転技術で楽しめるレースであって欲しいですね。
逆に上級クラスは車検適合を守った上で、足周りを自由にしたり(初期のメディア4耐がそうでした)、タイヤのグリップレベルをもう少し上げてもいいんじゃないかと思います。
マツダも各シリーズ3位までのドライバーにS耐への道を用意し始めましたし、レベルアップを目指すドライバーには、より高いレベルのセッティング技術や運転技術が必要なクルマの方が、得るものが多いと思います。
重箱の隅を突かず、純粋なセットアップでクルマを速くする方が、コストも抑えられるはず。
パーティレースには、ホントはもうひとつ上のクラスがあるといいんですよね。ほんと、2リッターの「MX-5 カップカー」が、もう少しコストダウンできていればよかったのにな。
現状でもパーティレースは堤優威選手や冨林勇佑選手を輩出し、若いドライバーたちがその後を追うようなレースに成長してきています。でもそれをもう少しだけ本格化できれば、かつての富士フレッシュマンレースのように、若手のステップアップレースになる。
いまは、そういうレースがないんですよ。
そしてフレッシュマン格式のレースができれば、クラブマンクラスがもっと楽しむためのレースになる。
もちろん主催者であるBーSportsも、そしてマツダも色々考えていると思いますが。
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♯30 ロードスター DSC-TRACK チームは第一ドライバーが筆者で、第二ドライバーが廣瀬専務取締役、第3ドライバーがボッシュの開発エンジニアである大浦選手、アンカーがDSC-TRACKを開発した梅津選手でした。そしてマツダからもう一台「人馬一体ロードスター」チーム(佐賀/中山/斎藤/中浦選手)も参加。マツダ同士だけに負けられない!? もちろん、きちんと勝ちました!(笑)。
さて日曜日のマツ耐ですが、スタートは私が務めさせて頂きました。第一スティントはピットインのタイミングが周りより遅めだったこともありますが、5位まで追い上げました。
その後は廣瀬専務取締役、ボッシュ のエンジニアである大浦さんと無事につないで、13位でアンカーの梅津選手にバトンタッチ。
燃費走行がうまく行った上に、長いセーフティカー走行の影響でガソリンが予想以上に残っており、梅津選手は50分間フルアタック!
ライバルであるブリヂストンチームを最終ラップで抜き(笑)、マツダ「人馬一体ロードスター」チームにも勝って、7位でチェッカーを受けたのでした(賞典外)。
いやーロードスターって、本当に楽しいスポーツカーですね。
1.5リッターしかない自然吸気のエンジンでも、良好なボディバランスと後輪駆動というふたつの武器があれば、大人が本気で楽しめる。
「DSC-TRACK」の他にも走りのアイテムが搭載される!? と噂のマイナーチェンジしたロードスター、登場が待ち遠しいですね。
パーティレースのいいところは、レースなのにこの笑顔があるところ。まじめにレースするけれど、それは楽しむためなのです。DSC-TRACKを開発した梅津選手もこの笑顔。ちなみにボッシュの大浦さん、走り終えた途端に足がつって大騒ぎでした。みんなを笑顔にしてくれたけど、かなり痛かったみたい(笑)。前日はよく寝て、当日はお水を沢山飲みましょう。
山田弘樹

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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