『クルマは最高のトモダチ』コラムスタートのご挨拶と、走り出し編集部員とAE86の出会い…山田弘樹 連載コラム
はじめまして!
今回からGAZOO.comでコラムを執筆することになった、モータージャーナリストの山田弘樹(ヤマダ コウキ)です。
いや、正確に言うとGAZOO.comでは、動画インプレッションを以前から行っているので初めてではないんですよ。あとは先日、GRヤリスの試乗記も書きました。GRヤリス、プロトタイプでしたけれど本当に興奮しましたね!
さてこのコラムでは、クルマの楽しさについて書いていこうと思います。
普段はモータージャーナリストとして最新のクルマたちを考察・分析している自分ですが、ここでは「プロのクルマ好き」として、コラムを綴ります。普段の原稿には書けないクルマ好きとしての本音も、真剣に盛り込んでいきますよ!
と言いますか、実はボクもそっちの方が得意なのです。
日本車の黄金期である1990年に免許を取ったボクは、いまや相当なオッサン…じゃなくて、この頃の男の子の例に漏れず、クルマが大好きな青年でした。
というよりもこの頃は、クルマのことを知っていると、なんだかわからないけどすごくカッコ良かったんです。もちろん大学のクラスやバイト先でも、クルマに興味のない人はたくさんいました。むしろそっちの方が多かったんじゃないかな?
でもマイノリティだからこそ、クルマに詳しい友だちがカッコ良く見えた。
雑誌オプションなんかを読みながら、「いいなぁ~」なんてタメ息ついている姿が何か謎めいていて、「何がいいの?」なんて話かけると、「マフラーを換えると、クルマが速くなるんだよ!」なんて教えてくれて、「えええ~ッ!?」って驚いたりして。
免許を取って自分のクルマを持ってるだけですごいのに、さらに部品を交換しちゃうわけ!?
今考えると実にレベルの低い会話なんですが(笑)、人とは違う、特別なことをやっている感じに、すごくドキドキしたものなんですね。
ちなみに当時のボクは本当にお金がない学生で、スポーツカーなんて夢のまた夢でした。乗っていたのはお古でもらったカローラのセダン(TE71だったと思います)。近所のお兄さんに「おっ、エフアールじゃん!」なんて言われても「何かの呪文か?」みたいな感じ。
かたや周りの友だちは、新車でフェアレディZ(Z32ですね)に乗っていたり、「オレはソアラが欲しいんだよね!」なんて言ってるものですから、カローラだと恥ずかしいやら悔しいやらで。今ならまったく、そんなことないんですけどね。
だからいつか必ず「スポーツカーをマニュアルで運転してやる!」って思ってました。
当時はマニュアル車を運転することが、本格的に思えたんですよね。
でも、お金がなくて良いこともあります。それは、詳しくなろうとすること。
学校帰りのファミレスで、友達からチューニングの話を聞くのはもちろん、買えるワケないのにディーラーへ行ってカタログをもらったり、雑誌を立ち読みするようになったり(笑)。
いやほんとお金がなくて、雑誌も「ティーポ」と「レブスピード」を月に2冊買うのが精一杯だった。他には「オートジャンブル」が大好きで、いつも買うか買わないかを、本屋さんで難しい顔をして悩んでいました。何度も立ち読みして、結局は買っちゃったりして。
雑誌を読んでいて気づいたのは、編集後記に「アルバイト募集」という告知がたまに載っていることでした。クルマに乗れて、雑誌が読めて、お金までもらえちゃうの!?と驚いて、けっこうたくさん、いろんな出版社でアルバイトしました。
自動車雑誌編集部のアルバイトって、当時としてもメチャクチャ時給が安かった(笑)。たしか時給にして700円台で、マクドナルドとガチ勝負だった気がするなぁ!
日当が良かったのはベストカー!でもそういう仕事は、なかなか回ってこなかったりして。
それでも編集部に行くと色んな雑誌が読めて、古くなったのはもらえたりした。あと、たまに広報車を引き取りに行く仕事があって、最新のクルマを運転することができたんです。それが学校では、ちょっとした自慢になったりして。
出たばかりのR33 GT-Rが会社の地下駐車場に止まっていたときは、ずーっと眺めていましたね。マツダスピードからフルエアロのRX-7を引き取ってきたときは、レーシングカーを運転しているような気分でした。初代NSXにも乗れたし、本当に嬉しかった。
あと現場では、いま自動車評論家として活躍する島下泰久君がまだ駆け出しのライターで友だちになったり、サーキットでは斎藤聡さんや瀬在仁さんが若手テスターとして活躍していました。
アルバイト仲間も自分のクルマをチューニングしてサーキットを走っていたりと、「絶対に自分でもクルマを買って、運転うまくなりたい!」と、自然に思うようになりました。
そのときに出会ったのが、ハチロク。もちろん古い方のAE86です。
今だから言えるけど、雑誌の個人売買コーナー宛にくるお便りの中から、格安で程度の良さそうなクルマをブッコ抜いて、ボクは後期型の2ドア トレノGTを手に入れました。
その後も86年式レビン 3ドア GT APEX(黒銀ツートン)を島下君から譲り受けて25年!くらい乗り、その間にホワイトのレビン(Gr.A+というレーシングカー)を買って草レースに出たりして、今は通算4代目になるトレノ 3ドアに乗っています。これももう、今年で9年目になりますね。
でもハチロクは、最初は好きじゃなかったんです。むしろキライだった(笑)。
当時はイニシャルDもやってなかったし、同じローパワーなFR車でも、ロードスターの方が断然お洒落で品が良かったんですよね。
簡単に言うとハチロクって、当時は「ボロくて安くてちょっとヤンキー」なクルマだったんです。
それでも「運転を覚えるには何のクルマが良いですか?」って聞くと、バイト先の先輩や編集部員の方たちが口々に「ハチロクかなぁ」って言うんですよ。
その頃、夢中になって見ていたビデオマガジン「ベストモータリング」で、読者が黒沢元治さんに挑戦するコーナーがあったんですが、そこでも運転がうまいヤツはみ~んなハチロクに乗っていた。
やっぱハチロクかぁ…。
だからボクも意を決して、アルバイトして貯めたお金を全部つぎ込んで、一番最初のハチロクを手に入れたんです。そして、自分で乗ってみて初めて、「ハチロクは楽しいクルマなんだ!」とわかったんです。
というわけで次回は、ハチロクの楽しさについて、もう少しだけお話したいと思います。
(写真/テキスト:山田弘樹)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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