『クルマは最高のトモダチ』やっぱりグッときた! GRヤリス試乗!! …山田弘樹連載コラム
今回は、テンション高めのコラムです。
というのも遂に、遂に、遂にッ!
GRヤリスの市販直前モデルを、サーキットとグラベルステージで走らせることができたのです!
市販直前モデル? そう、そんな口幅ったい言い方になったのは、まだGRヤリスが発売前だから。試乗したモデルはほぼ市販モデルと考えて間違いないですが、試乗会ではプロトタイプと銘打たれていたわけです。
ちなみにボクがプロトタイプに試乗したのは昨年の12月末。あれから約7ヶ月強の時間を経て細部を煮詰めたGRヤリスは、果たしてどれくらい完成度を高めたのか?
赤パン(私の愛車、AE86トレノですね)を手放してもいい! と思えるほど、ホットなマシンに仕上がっていたのか!?
さて、ほぼ完成車として対面したGRヤリス。
今回はトップグレードである「RZ」に、BBS鍛造ホイールやトルセンLSDを装備した“Highーperformance”と、素の「RZ」、そして外装はGRヤリスそのままに、1.5リッター/FF/CVTの組み合わせとなる「RS」を試乗しました。
細かな仕様の説明は様々なメディアに任せて、ここではクルマ好きが最も気になるところからイッちゃいましょう!
一番グッと来たのは、やっぱり“ハイパフォーマンス”でした。 今回はステージがサーキットということもありますが、小さくガッチリしたボディに対して、足まわりと駆動系がベストマッチングだからです。
- RZ High performance/RZ/RSの順に試乗。一番最初に一番強烈な仕様に乗ってしまったせいもあるのでしょう、HPが最もホットで楽しいバージョンだと素直に思いました。あとは一般道で試乗してみたいですね!
そもそも、GRヤリスはオーナーがその性能を、クローズドコースで思い切り楽しむために作られたクラブスポーツ。価格は456万円と高価ですが、この結果には納得。うーん……絶対的な価格は高いけど、内容を考えると納得せざるを得ない!
具体的には前後に入ったトルセンLSDの効果が抜群でした。今回の試乗ステージとなった富士ショートコースは、3コーナーから始まる登りセクションがクルマにとっても厳しいコース。ここでRZハイパフォーマンスは、内輪を僅かに空転させながらも外輪にトラクションをガッツリ伝えて、失速するどころかグイグイとマシンを引っ張って行くんです。
- 下りのホームストレートから1コーナーに飛び込むところです。この後、左右左と3つのコーナーを曲がってから左の土手の上へと続く、“登り感”が分かってもらえますか?
そのシッカリ感は、バネ/ダンパーが違うの!? と思ってしまうほど。装着されるタイヤ(HPはミシュラン パイロットスポーツ4S、RZはダンロップ SP SPORT MAXX050)の剛性や、ホイール(HPはBBS鍛造、RZはエンケイ鋳造)の軽さも絶妙に効いていますが、やっぱりLSDの効果は大きいと思います。
- HPは前後にトルセンLSDを装備。BBS製鍛造ホイールとミシュランPS4Sの組み合わせもよかったですが、ブレーキ性能の高さにも驚きました。ホイールの中にはローターがギッチリ(笑)。でもクローズドコースで走った限りではバネ下がバタつく感じもなく、制動力も十分。終始タッチが良くて、1台10分間の試乗ではフェード知らずでした。
ではRZがだめなのか? と言えば、そこは難しい。
だってGRヤリスの速さやたくましさを、日常で普通に感じていたいオーナーも沢山いるはずです。なおかつ約60万円の差額で自分好みにチューニングしたい人もいるでしょう。
ただもう少し待てば競技用のベース車輌が発売されるはずだし、賢く仕上げるならそっちがいいのかなぁ。でも結局はハイパフォーマンスを最初から買った方が、コスパに優れるのかな? などなど、ほんと妄想が尽きません。
ただRZで言えるのは、グリップレベルが少し低い分だけ、動きがより穏やかだったこと(ルーズとも言えます)。特にスポーツモードに入れたときは、姿勢変化もわかりやすく感じました。
そう、GRヤリスは前後のトルク配分を可変できるのです。
シフト奥のダイヤルを回すと通常の60:40から、スポーツモードで30:70、トラックモードで50:50へと設定が変更できます。
となると注目はスポーツモードの挙動ですが、これは結論から言ってしまうと、ドライのターマックでドリフトできるようなモードではありませんでした。
どちらかといえばそれは、フロントの駆動力を減らしたことで、素直な回頭性が得られるという印象。カウンターを大きく切ってカニ走りしながら、それでも前に進んで行く! というお楽しみモードではありません。
- 当日はベアコンポーネンツも展示されました。今回は1.6リッター直列3気筒ターボの特性や魅力について話せずじまいでしたが、次回では必ず!
速く走ることと、楽しく走ること。この境界線ってとても難しいのですが、個人的な主観でいうとボクは楽しく走る派。
ブレーキングからターンインしてリアが穏やかにスーッと動き、それで向きを変えながらアクセルでクルマをコントロールしてゆくのが好きなので、スポーツモードにはもう少し向きの変わりやすさを与えて欲しかった。
LSDというよりも、サスペンションセッティングの前後バランスを、ターマックではもう少しニュートラル寄りにしてみたいなぁと思いました。
でもそれって、なかなか難しいことです。GRヤリスのホイルベースは2560mmと短いですし、Bセグボディにピーキーな旋回特性を与えすぎるのは考え物です。
だからそうした走りは、オーナーが手に入れてから色々と自分で模索して行くのがよいと思います。それこそがチューニングの醍醐味ですし、それをしたくなるだけの、素のポテンシャルがGRヤリスにはある。
そう、まだGRヤリスは出たばかり。というか発売前! それでここまでのインパクトを与えたことがまずすごく嬉しい。そして年を経るごとに、これが熟成して行くことを願います。
- 遂に見ることができた市販バージョンのインテリア(写真はGRパーツ装着車)。RZはトランスミッションにスポーツATを用いず6MTのみとしたのは、軽さを最優先してとのことでした。
そういう意味でも今回は、トラックモードで無駄なく美しい走りを目指す方がホットに感じたんです。クルマを振り回さずに可能な限り速く走らせるなかで、僅かにリアの荷重を減らして向きを変えてアクセルを踏んで行く。
派手好みではないけれど確実にヨーモーメントを作りながら走らせるドライビングは、まさにレーシングスポーツ。これって現代のWRCにも通じる走り方ですよね!
コリン・マクレーとセバスチャン・ローブの違い!?
そしてきっとトヨタはスポーツモードであっても、こうしたWRC的な走りを目指したのだと思います。無駄のない走りをする上で、30:70と50:50どちらが好みなのか。そういうマニアックな要求に応えたという意味でも、GRヤリスはまさにWRCのホモロゲーションモデルなのでしょう。
あぁ、まだエンジンのことも言ってない。魅力的なGRパーツのことも言ってない。
ライバルと思われるクルマたちとの違いは?
赤パン売るの、売らないの?(笑)。
というわけで次回も、GRヤリスで引っ張らせて頂きます!
(写真/テキスト:山田弘樹)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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