『クルマは最高のトモダチ』「昔のクルマは、今でも輝く![後編]」AE86、磨きあがってピッカピカ…山田弘樹連載コラム
全塗装しないともう無理だと諦めていたボディが、ちょっと磨いてみたら顔が写るほどピッカピカになった。
こうなりゃ全部、お願いしますッ! というわけで後編に突入です。
ところで今回一番衝撃的だったのは、実は作業に入る前でした。
そう、なんと打ち合わせの段階で既に、ライズヨコハマの代表である荻洲さんは、赤パンの鈑金履歴を見抜いていたのです。
なぜなら荻洲さん、そのキャリアを板金からスタートしていたんですね。
いわく、「このクルマ、左のリアだけじゃなくてフロントもやって(ブツけて)ますねー」。
えッ……確かにその通りです。
「そしてココとココと、ココとココも」
えぇッ、そこも!? あらッ、そこまで!?
これには軽く、ショックを受けました(笑)。
まぁハチロクなんて、ブツけてない方が少ないクルマです。だからワタシも普段は「真っ直ぐ走ればいーんだよ!」なんて言ってますが、改めて言われるとガクッときます。
いやー、悲しい。でも、いーんです。 走らせれば、今でも気持ちいいんだから。
とにもかくにもこうしてボディの状態をお互いに確認してから、磨きの作業に入ったのでありました。
そんな磨きの工程は前回お話した通り、実に細かいステップを踏んで行われます。まずは洗車を入念に行って、そこから時間を掛けてマスキング。そしてようやく、段階の磨き工程へと突入します。
磨き作業に入る前の準備段階。洗車を終えたクルマは徹底的にマスキングされて、磨く部分だけが露出されます。
下地となる磨きの作業を終えたら、ようやくコーティング。使ったのは「ダイワ プロテック ナノメタルコーティング」という撥水タイプのコート剤で、色褪せを防止する能力もあるのだそう。
なんとその効果が認められて、今では全国の、赤い色した炭酸飲料の自動販売機にもコーティングされているのだとか。
赤は色あせますからねぇ。
そして作業は実に、3日間たっぷり時間をかけて行われました。
果たしてその結果はーーーーー?
うっそ、まぢこれ赤パン!?
ちょっと、おい。赤いボディに空が、映り込んでるじゃないか!
日の光の下では、ボディに周りの景色がバッチリ映り込んでます。磨いて色味を復活させた上からガラスの層をコーティングしているから、さらに輝きが増すわけですね。塗装するくらいならカーボンボンネットを買おうかと悩んでいたけれど、節約できました。いや、ボンネットはボンネットで、欲しいんですけどね。
それでも荻洲さんからは事前に、「ボディを磨くとこれまで目立たなかったチッピング(飛び石による塗装の欠け)や“エクボ”が、クッキリ見えるようになります。
これまでくすんでいたボディが光りをきれいに反射するようになることで、逆に“アラ”が目立つ場合もあることを、知っておいてくださいね」と言われていました。
確かに、所々チッピングしているし、エクボもわかる。でも自分としては赤パンが、輝きを取り戻したことの方が嬉しかったのでした。
「今回の作業は、自分がやったなかでもかなり大変なレベルでした。でも同時に、昔の職人さんはやっぱり上手だなぁ、とも感じました。今の効率重視な鈑金作業よりも、ずっと手を掛けて作業してくれているから、地肌を出さずに磨き上げることができたんだと思いますよ」とのこと。
本当にひどい鈑金作業の場合は、磨けないこともあるんだそうです。
さて施工後のメンテナンスですが、1ヶ月くらい水洗いのみ。カバーもかけないで欲しいとのことでした。
ただいったんコーティングが硬化すると、あとは洗車機に掛けても平気なほど頑丈な皮膜ができあがるそうです。
そして普段のお手入れは、水洗いしてさっと拭き上げるだけ。汚れが簡単に落ちるから「洗車が楽しくなりますよ」とのことでした。
ただ気をつけて欲しいのは、水の拭き残し。水道水はカルキが入っているから、雨水よりもウォータースポットの原因になりやすいのだそうです。
でも、荻洲さんみたいにエアで吹き飛ばすことできないしなぁ……。そしたら「洗車したら、軽く走ってあげるといいですよ」と教えてくれました。なるほどねー。
皮膜の効果は、年に一度メンテナンスすることで持続させます。自分でもお手入れしたいなら、洗車後に撥水コーティング剤(シュアラスターがお勧め)をスプレーしてあげると、長持ちするそうです。
とはいいながら荻洲さんも、「次はオールペンを考えた方がいいですね」とひとこと。
「メンテ次第ですけど、これでも何年か経つと、退色はしてきますから」とアドバイスをくれました。
いやいや1年以上もってくれたら、まずは御の字ですよ。メンテして2年稼げたら、その間にオールペン貯金できるかなぁ!
ちなみに今回の施行は、赤パンの場合だと10万円+税でした。磨きとしては高額ですが、オールペンの延命手段として考えると、コストパフォーマンスは高いと思います。
これだけきれいなら、まずは錆びた部分だけ鈑金してもいいかも。
いや、コンピューターが先かな?
排気系もやらないと……。
コーティングを終えてその塗装面をチェックする荻洲さん。実はプラモデル製作も、プロのモデラー顔負けの腕前です。そして職人さんであるだけでなく、ご自身でもGT-Rに乗る大のクルマ好きだから、オーナーの気持ちをわかってくれます。「ハチロクは、大切なクルマですからね!」と気合いを入れてくれました。あざす!
いやー、とにかく見違えるほどきれいになった赤パン。まだまだやらなきゃいけないことは沢山あるけど、見た目が良くなるとやる気が湧きます。
なんだか元気が出てきたぞ。がんばってコツコツ、直して行こう!
(テキスト:山田弘樹)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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