『クルマはトモダチ』愛車を探そう!…山田弘樹連載コラム
みなさんゴキゲンよう!
突然ですが先日、GAZOO.com編集部から新しく始まる試乗記の依頼を受けました。テーマはずばり、「愛車を探そう!」。
そのクルマは、どんな人にお勧めなのか。
どんな人にとっての愛車になるのか?
と、クルマの魅力にフォーカスしながらリコメンドする試乗記です。トップバッターは、愛車になることを目指して大変身を遂げた「プリウス」。よかったら、読んでみてくださいね!
というわけで、今回のテーマは「愛車」です。
でも愛車って、改めて考えると、どういうクルマなのでしょう?
私の愛車は、現在2台。86年式と思しきトヨタ スプリンター トレノ 通称“赤パン”と、95年式 ポルシェ911 カレラ(Type993)です。
かたや37年、こなた28年選手で、両方とも今となっては完全なマイノリティである、マニュアルトランスミッション車。
好きな人にとっては「いいなー」な2台ですが、コンディションの維持を考えると、新車や新しめなクルマのように、フールプルーフには行きません。
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11年の付き合いでようやく相棒感が出てきた“赤パン”ですが、実は手に入れた当初、まったく愛着が湧きませんでした。箱替え新調したピカピカなボディを手に入れて、20バルブエンジンまで搭載したのに、20年ほど連れ添ったあと錆が原因で手放した黒銀レビンの方が、くたびれていたけど断然好きだった。愛車になるには、やっぱり時間が必要なんですね。
そしてこの2台、それぞれの立ち位置が全く違います。
赤パンは、いわば「相棒」でした。私がフリーランスのエディターから、「モータージャーナリストになりたい!」と活動をシフトしたときに、それまで乗っていたフェアレディZ バージョンNISMOを手放して、選んだクルマです。
ハチロクにした理由はシンプルで、Zに比べて遙かに維持費が安かったから。小さくてコンパクトな割に荷物は沢山載るし、小回りも利く。
そして何よりFRだからです。レースするお金はなくても、ミニサーキットは走り続けたかった。タイヤなんて、インチアップしてても15インチですからね。
ただ今でこそハチロクはリスペクトされていますけど、10年前だとまだまだ「走り屋のクルマ」でした。
だから仕事でプレミアムな輸入車の試乗会なんかに行くと、案内係の人が思わず「ぷぷぷ…」と笑い出しちゃったこともあったんですよ。
失礼しちゃうなー!(笑)。
でも、それもわかる気はします。確かにあの頃は場違い感、ものすごくありましたから。
ボクはそんなハチロクをフツーに乗りこなすのがステキだと思っていたんですけれど、まだちょっと時代が追いついていなかったんでしょうね。
つまりハチロクは、ボクと一緒に成長してくれたクルマだったんです。これ一台しかないから、どこへ行くのも一緒。
ラジエターがパンクしたり、クーラーが壊れたりしながらもなんとか意地で直して、SUPER GTの取材では岡山やSUGOまで自走して行った。その合間にミニサーキットを走って練習しました。
だからハチロクは、愛車を通り超して根性のクルマ。まさに相棒だったんですね。
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清水の舞台から飛び降りて、気がつけば今年で6年目。今でもどこまで維持できるかヒヤヒヤしっぱなしですが、正直ここまで乗り続けられるとは思ってもいませんでした。993を手に入れる前は同じポルシェでも「GT3」や「カレラRS」に憧れていましたが、今は本気でこの“普通のカレラ”に夢中です。
対して993は、完全な憧れでした。手に入れた経緯は、このコラムでも書きましたから、よかったら読んで見てください。
ポルシェの997GT3をお手本にフェアレディZをチューニングして、クラブスポーツに仕上げて行くほどに見えてきたポルシェの耐久性。
仕事でも911に試乗する機会が増えて、そのクルマの造りのこだわりっぷりに、この仕事をしているなら一度は所有してみないといけないと思うようになった。
そして鬼ローンを組んで、どこまで維持できるかチャレンジしてみたんです。ほんと、今考えても無謀なチャレンジでしたね。
そしたらなんと、購入からはや丸5年が過ぎました。そして今でも、アチコチ節約しながら、なんとか走り続けています。
993の魅力は沢山ありますが、やっぱり3.6リッターの空冷・水平対向6気筒はその要です。30年近く前のエンジンが、今なおその鼓動や存在感、パンチのある加速で感動させてくれます。そしてこのリアシートも、長く乗り続ける上で大切な要素のひとつでした。実質大人が座るのは無理なシートですが(笑)、気軽に手荷物が放り込めて、大きな荷物だって積める。それだけで、全然違うんですよ。
その喜怒哀楽・ひきこもごもなレポートはGENROQ誌のロングターム・レポートで連載しているので割愛しますが、すごくざっくり言うと空冷993は、経験上ですがものすごくタフなクルマでした。
「油冷エンジン」とも言われる空冷・水平対向6気筒のオイル管理、オイル漏れ対策を怠らなければ、渋滞は苦手ですが、あとはいたって普通に走ってくれます。
エアコンのコントロールユニットがリビルトでも目から火が出るほど高かったり、純正パーツの値上がりが激しかったりするけれど、急を要さない所以外は「いつか直すからね…」とそっと目をつむれば、今のところは大丈夫。大丈夫な、はず!
そして然るべき場所でM64エンジンをきっちり回せば、それまでの苦労が冗談みたいに吹っ飛びます。しなやかな足周りでリアエンジンの慣性をコントロールして、トラクションを掛けてコーナーを立ち上がると、めちゃくちゃ幸せな気持ちになれる。
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愛車の熟成過程で最も困るのは、魅力的なクルマに出会ってしまったとき(笑)。最近だとメルセデスの190Eで、5速MT車が売りに出ていて悶絶し、奥さんに話したら「いいね。でも買うなら赤パン手放してね」と断られました(笑)。あとは定期的に、ロードスターとGRヤリスが欲しくなります。コンパクトなスポーツカーはハチロクがあるんだからいらないじゃん! とその都度自分に言い聞かせます。
クルマを愛車にするのって、実は結構大変です。愛着が湧くほどの時間を過ごす間には色々なドラマがありますし、憧れを手にするには、犠牲にしなくてはいけないことも沢山ある。
それでも一番大切なのは、「好き♡」と思えるクルマを買うことです。
価格や維持費、車庫に入る大きさや、積載性。
そうした条件を満たすことは大切ですが、それと同じくらい直感的にも理論的にも「好き」なこと。
たとえば燃費が数㎞/ℓ違うとか、トランク容量が少しだけ小さくても、「好き性能」が高いクルマを買うことが、幸せにつながると、私は本気で思っています。
みなさんも、大好きになれるクルマとの出会いを探してみてください。きっと人世が楽しくなるよ。
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実は昨年の暮れに、奥さんがセバスチャン('11年式シトロエン DS3の愛称)のドアをブツけてしまいました。鈑金代は、ちょっとした金額。これからもお金は掛かるだろうし、買い替えるにはいいタイミングかもと散々悩みましたが、奥さんはセブを直しました。愛車と暮らし続けるのって、こういう大変さもあります。
愛車試乗レポートを今回一緒に撮影したGAZOO.com編集部の岡本さんと山崎さん。これからもみなさんと、面白い試乗記を作って行きたいと思います。そしてカメラマンの雪岡さんとは、最近youtube「クリッピングポイント」も始めました。まだまだ小さなチャンネルですが、こちらもよろしくお願いします!
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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