『クルマは最高のトモダチ』最初からこんなに…!? GR86とBRZは夢中になれるクルマ!…山田弘樹連載コラム
話題のトヨタ GR86(プロトタイプ)/スバル BRZに、乗ってきました!
既に様々なメディアで試乗記が発表されており、私もGENROQwebでコッテリとしたためましたので、アーキテクチャーの紹介は省略。
ここではずばり、走りの楽しさに的を絞ってお伝えします。
で、どうだったのよ?
まずは、楽しい! 走ればめっちゃ笑顔になれます。
そして「今のひとは幸せだなぁ」 とシミジミ思いました。
じーさんかッ!
だって最初から、こんなに仕上がっている量産スポーツカーってないですよ。
仕上がってたらイジくる楽しみがないって? それはきっとダイジョウブ。素材が良いから、さらに良くなるでしょう。
でも、そのままでも十分。
むしろノーマルでサーキットを走れることに、ボクはこの2台の価値を感じます。
ボクが若い頃はバブル期で、確かにスポーツカーも今より遙かに沢山登場したけれど、ノーマルのままサーキットを連続周回できるクルマなんて、実はほとんどなかった。
マツダ・ロードスターくらいかなぁ。
「クルマ買ったらアシ換えるっしょ!」
「タイヤ換えて、ブレーキやって…」
ってのが当たり前でした。
でも新型GR86/BRZは、ノーマルのままでサーキットを走れます。一生懸お金出して買ったら、そのアシで走れる。少なくとも袖ケ浦FRW級のコースなら。十分でしょ!?
当日はアウト/インラップ含めて1台4周の短い試乗でしたが、そのまま30分走行を続けても、ブレーキが奥に入ってしまうようなことはないんじゃないかな? という感触。
少なくともブレーキフルードとパッドを耐フェード性の高いものに換えれば十分だと思う。
それは速さに対して、車重とタイヤのグリップバランスが整っているからです。結果クルマに掛かる負担が少なくて済むわけですね。
肝心なエンジンは、今回2.4リッターになったことで“ちょこっと”速くなった。
このちょこっとが、ポイントです。
確かにターボが付いて、現代版S15(シルビア)みたいになったらワクワクするけど、しなかったのが実は偉い。
これは主にパッケージングの制約が理由だと思いますが、もしこの2.4ボクサーがターボ化されていたら、そもそも価格が高くなってしまいます。
さらにブーストアップの誘惑はあるし、耐久性を高めるにはインタークーラーも大型化したくなるし、吸気に排気にと色々やらなくちゃならないことが増えて、どんどんお金が掛かる。
そしたら、走るどころじゃないですよね。そういうプレミアムな速さは、トヨタならGRヤリスやGRスープラ、スバルなら次期WRXにお任せです。
ただNAエンジンはチューニングの対費用効果が低いですし、新たにターボを付けるのはハードルが高い。
チューニングで手軽に速くできないところは、相変わらずのチューナー泣かせというわけです。
2.4リッター化は、先代だと「もうちょっと速かったらなぁ」と思う部分を絶妙に補っていました。φ94×86mmとボアで排気量を上げているので、回転フィールがもっさりしてないのも嬉しいポイント。疑似サウンドは実力以上の音を出している気がしたけど、聞いていて悪い気はしませんでしたよ。インマニが塗装されてる分だけBRZの方がちょっとオシャレ(笑)
実際に走らせてみた印象は、絶妙なスピード感でしたよ。
ターボ車や大排気量NAマシンのような加速のスリルはないけれど、全開率はその方が上がる。常にアクセルを目一杯踏んで走れるから、トータルではこの方が楽しい。
ボクらのようなアマチュアが夢中になって走らせられる、ちょうどいい速さだと思います。
2.4リッター化の恩恵は、ストレートよりもコーナーの自由度に大きく貢献しています。
ターンインでリアがスーッと流れ出したとき。クリッピングポイントからアクセルを踏み込んで、ズルズルズル……っと来たとき。
ここでトルクに余裕があると、アクセルで姿勢をバランスさせやすい。
だからドライバーは、ブレーキングからターンインにかけて、クルマを曲げることに集中できます。
そこからのドリフトコントロールも、前よりやりやすいんじゃないかな。
両者のキャラクターは、GR86が曲がりたがり。曲がったあとのコントロールを楽しみ、腕を磨くクルマというのが、ボクの第一印象です。
BRZはトラクション重視で、いかに曲げて行くか? を対話して行く玄人好みなクルマ。どちらもバランスの良いFR車ですが、その上で違いがある。
撮影:篠原晃一(SHINOHARA Kouichi)
GR86は鋭いコーナリングフィールが刺激的。“コーナーに放り込んで行く感覚”には、ちょっとAE86のスピリッツを感じました。ハイスピードでドリフトしてるのに、アクセルをバランスさせればリアの接地が抜けないのにも驚いた!
誤解を恐れず言えば、GR86の方がドリフトさせやすいので、積極的で元気なドライバーにはお勧めです。
また上級者でも、これを滑らせないギリギリできれいに走らせるのは、いい訓練になると思う。
かなり曲がるから、ターンインでどこまで攻められるか挑んで行くドライビングには、心地良い緊張感があります。
ウェットのときなんかはヒリヒリしそうだなぁ。
そしてドリフトさせても、普通はスピンアウトだろ!? と思うような高い速度域でアクセルコントロールができるから、ちょっとブッたまげます。
これ、本当にノーマルで売ってるの!?
撮影:篠原晃一(SHINOHARA Kouichi)
BRZはGR86と比較してですが穏やかなハンドリングが特徴。追い込んで行くと曲げにくい部分が出てくるけれど、ノーマル車ならこれが普通(笑)。そしてトラクション性能が高いため、じっくりとリアの挙動をコントロールして行けます。
対してBRZは、トラクション性能が高い。滑りながらもリアタイヤが路面に食いつき、前に進もう、進もう! とするその姿にはスバル魂を感じます。
ただブレーキングでフロント荷重を高めたときに若干バンプタッチ(底付き)するような感じがあり、GR86のように攻め込むとステアリングが反応しない(つまり曲がらない)領域がある。
少し進入速度を落とすか、ターンで待つか。そこからアクセルを入れてやるかなど、曲げるためにはちょっとだけ運転の引き出しが必用です。
でも、だからこそBRZのハンドリングはGR86に比べて落ち着きがあって、より多くの人たちが運転しやすいと思うはず。
そしてこういった部分を、今までは自分たちで好みにチューニングしてきたんですよね。
それをGR86とBRZでは、メーカーがやってきたから驚きました。
著しいボディ剛性の向上や排気量アップといった、その進化レベルから考えるとスバルBRZで308万円~(グレードR・6MT)という価格には納得。
ただ先代モデルのように、250万円を割ったモデルがなくなってしまったのは、このスポーツカーの使命を考えると残念です。
でもこれで、初代86/BRZの中古相場が少しでも下がってくれたら嬉しい。若者たちが乗れるスポーツカーを作るためにも、我々オッサンたちは新型GR86/BRZを購入ましょう!
(写真提供:SUBARU)
(テキスト:山田弘樹)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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