『クルマは最高のトモダチ』M2 CS RACINGでニュルを目指せ!? …山田弘樹連載コラム

  • 出場したスーパーカークラスを筆頭に、VWAーCUP、アルファ・チェレンジの各クラスやアバルト・チャレンジのマシンが混走したそのスタートシーンは壮観。まさにヨーロピアン・ツーリングカー・チャレンジといえるレースだった。

10月10日(日)、富士スピードウェイで開催されたETCC(ヨーロピアン・ツーリングカー・チャレンジ。欧州車オーナーのための、ノンライセンスなホビーレースです。http://www.etcc.jp)に、BMW M2 CS RACINGで参加してきましたッ!
もう一度、あのステアリングを握れるなんて。あぁなんて、幸せなんだろう!

というのもこのETCC、今回は様々なレースが重なって欠席が多かったようですが、ボクが出たスーパーカークラスは、普段ポルシェ911のカップカーやケイマンGT4、フェラーリ・チャレンジのマシンやFIA-GT3、そしてTCRマシンなんてスーパースポーツたちが出場し、ホビーレースを楽しんでいるらしいのです。

それってM2 CS RACINGにとっても、ちょうどいい舞台なんじゃない?
スーパー耐久みたいな公式レースもいいけれど、ホビーレースでもM2が楽しめる姿を、みんなに見てもらおう!
というわけでBMWスタディとToto BMWが、このレースにエントリーしたのです。
そしてホビーレースだからアマチュアの私が、ドライバーに選ばれたのでした。
でもってTeam Studieとしてゾロゾロ行くのも違うから、スタディ渡邊一輝メカと、ノバの山下メカがサポートについてくれました。

  • 当日はS耐でも一緒に走ってくれた大井師匠が、練習走行からその走りをチェックしてくれました。またマシンにはAIMのロガーがインストールされているので、コーチやチームメイトとの走りをグラフで比較することも可能。アクセル開度からブレーキプレッシャ、ステアリングの切り角度と、様々なデータで走りが丸裸にできちゃいます(笑)。

さて肝心なレースの方はというと、おかげさまでポール・ポジションを獲得することができました。今回はスーパーカーたちがお休みでしたが、それでも30台くらいのマシンがエントリーしていて、練習走行から予選まで、クリアラップを取るのはちょっと大変でした。

タイヤは今回、スタディがヨコハマのスリックを履かせていました。サイズはS耐で履いていた280幅から、250-660-18へと試験的にダウン。それでも1アタックで自己ベストの1分51秒前半が出たので、ちょっと驚きです。タイヤは前後バランスが取れている感じで、細身でも意外と走りやすかった。

  • 予選は1周のクリアラップながら1分51秒710をマーク。なんとS耐の自己ベストを上回ってしまったが、そこには気温やタイヤ条件の違いがあると思う。またポンと乗ってすぐにタイムが出せたのは、M2CS RACINGが乗りやすいマシンだからこそ。もう少しセッティングを詰める作業ができれば、さらにタイムは上がる予感がある。

迎えた決勝レースは、お隣のピットにいたアウディとの一騎打ち。マシンはTT-RSで、APRチューンによって600馬力!! を出している4WDターボです。ベストラップでは2秒ほどM2 CSRが速いのですが、ストレートで前に出られたら、勝負はわかりません。だからメインストレートまでに、可能な限りマージンを作る作戦でした。

カップカーがいる場合はローリングスタートとなるこのスーパーカークラス、今回はスタンディングスタートが採用されました。もちろん私はM2 CSRでスタンディングなんてやったことないし、ヨーロッパのM2 CUPを見ても(YOUTUBEで見られますよ!)、ローリングスタートが通常です。
ローンチ機能は付いてない。駆動系を痛めるから、ブレーキとアクセルを同時に踏むのも止めておこう。

というわけでレッドシグナルが消えた瞬間、そーっと踏み込んだら、1コーナーでホールショットが取れちゃいました。あれれれ?

バトルはM2 CSRがコーナーで引き離し、Audi TT-RSがストレートで抜く予想通りの展開。車重はどちらもおよそ1500kgと同等で、ストレートが速くブレーキングポイントが手前のTT-RSと、奥までブレーキを詰められるM2 CSRが、お互いのキャラクターを活かして何度か攻守を入れ替えるレース運びとなりました。

あとでオーナーさんがYOUTUBEにアップしている車載映像を確認したら、TT-RSのトップスピードは280km/hに届いていましたよッ! 直列5気筒の2.5リッターターボをここまで速くするなんて、APRすごいな。
そして最終ラップの100R、アウト側からまくったM2 CSRが前に出ると、バックマーカーにも助けられて逃げ切りチェッカーを受けました。

スタートから最終ラップまでレースを一緒に楽しんだアウディ TT-RS。ドライバーの浦野督広さんはハンディキャッパーだが、なんと600PSのマシンを両腕だけで操作。右手はハンドルとシフトを担当し、左手でブレーキとアクセルを使い分けてマシンをコントロールしていた。その走りは実に安定していたし、レース運びも熟練していたので、私も安心してサイド・バイ・サイドのレースをすることができました。すごい人もいるもんだ。

楽しいレースができたのは、アウディTT-RSのドライバーである浦野督広さんが、紳士的なレース運びをしてくれたから。無理なブレーキングやブロッキングをすることなど一切なく、お互いのラインを残して走ることができたからです。
ホビーレースは、こうでなくちゃね。レース後はピットを訪ね、お互いの健闘を称えあって気持ちよく締め括ることができました。

この日の模様は、スタディBOB会長のnoteでもドキュメント映像で確認できます。

さて久しぶりに運転したM2 CS RACINGでしたが、やっぱりとんでもなく気持ちがいいレーシングカーでした。まずなにより素晴らしいのは、そのボディ。ドライバーの安全を守るために張り巡らされたロールバーは、安心感がケタ違いです。

またその剛性も市販車とは比べものにならないほど高められていて、おかげでハンドリングがとても素直になっています。

スポーツエキゾーストを装着した直列6気筒ツインターボは、パワーだけでなく質感が最高! デュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)はシフトダウンでブローの心配もないし、シフトアップでは加速Gとサウンドが途切れないから最高に心地良い。

M2CS RACINGは、ストレート・シックスの魅力がぎゅーっと詰まったレーシングカーになっています。そこが、何よりのチャームポイント。

当たり前のようにエアジャッキで車体が持ち上がり、雨が降ればきちんとレインタイヤが用意されて、ドライはスリックタイヤでアタック! 本格的なコクピットに座れば自然と気分が盛り上がって、最高に充実した時間が過ごせる。これですよ、質の高いレーシングカーの良さって、これを味わうことなんです。

そしてこのM2 CS RACING、なんとBMWディーラーで買えるようになりました!
これまでBMWのレーシングカーは、BMWモータースポーツが開発を行い、レースに出場するエントラントにのみ販売されてきました。
しかしBMWモータースポーツとBMW M社が合併したことで、ディーラー販売が可能になったんです。
そして「モトーレン東都」(BMW Toto)が、日本のBMW Mモータースポーツ・ディーラーに選抜されたわけです。

ピットには沢山の方が遊びに見に来てくれた。中にはカタログを持って却って下さった方も! 今後もM2 CS RACINGは色々なイベントに行くことになると思うので、気になる方は遠慮せず、スタッフに話しかけて下さいね。
Toto BMW特設サイト

確かにM2 CS RACINGは、ベース仕様(280PSから365PS)で1499万円、今回走らせた450PSのハイパフォーマンス仕様だと1799万円と、まったく安い買い物ではありません。
でもこの完成度を持つレーシングカーとしては、破格です。少なくとも市販車をチューニングしたり、それをベースにレースカーを作ったら、この価格では収まらない。

だからその価値がわかるひとは、ぜひ手に入れて欲しいです。もちろんボクには高値の花だけど、20台くらい集まって、日本で「M2 CUP」が開催できたら、きっと素晴らしいジェントルマンレースになると思います。

コスト的には、かつてのアルテッツァやシビックのワンメイクレースよりも、トータルでは掛からないんじゃないかなぁ……。
コンプリートカーの完成度が高いから、レーシングガレージが再び一から組み直す必要もないでしょうし、そうしてまで勝ちに行くレースじゃない。

イメージ的に言うと、VWゴルフで行われたポカールレースや、GTIカップの上級番。カレラ・カップよりもリーズナブルで、速さもそこそこある華やかなレース。
まだ964RSでやっていた頃のカレラ・カップみたいになるといいなぁ! って思うんです。

そしてM2 CUPで腕を磨いたら、今度は聖地を目指す!
M2 CS RACINGのワンメイククラスがある、NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)に出るんです。
そんなロングストーリーができたら、夢がある。
長くモータースポーツライフを、楽しめそうじゃないですか。

  • レースはポール・トゥ・ウインでチェッカー。今回はちょっとできすぎだったけれど、ともあれM2 CS RACINGがどれくらいのポテンシャルであり、ホビーレースでも十分に楽しめる素材なのかは証明できたと思う。

(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。


[ガズー編集部]

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